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理事長室

2025年 年頭所感

 令和7年の念頭にあたり,謹んで挨拶を申し上げます。

 昨年を振り返りますと,元日は能登地方が大地震に見舞われ,死者・行方不明者の累計が500名を超え,翌2日は海上保安庁職員が5名失われる大事故が発生,そして9月には能登地方が大水害による追い打ちを蒙り復興はますます厳しい状況にあります。 世界的にはウクライナおよびガザの戦争は一向に収束する気配がなく,むしろ拡大の懸念が強まり犠牲者は増え続けています。アメリカ合衆国大統領が交代することで大きな転機が訪れると予想する向きもありますが,現実はなお不透明と思われます。

 このような大事件に比べると些細ではありますが,我が北海道社会事業協会の今年1年の展望などを述べたいと思います。

 昨年(令和6年)の年頭所感で私は法人の主力事業である病院運営を脅かす3つの要因を示しました。 「働き方改革」「感染症」「物価高/賃上げ」です。

 一つ目の「働き方改革」については,昨年一年間で大きな影響は出ていません。これは法の施行初年度のため,労働基準局の監査などが控えられていたからではないかと邪推します。今後,2年くらいのうちに監査・監督が厳しくなると予想されますので,その時から地域医療の本格的な崩壊が始まるのでは,と大いに危惧しております。

 それは,地方の病院はどこも医師・看護師不足ですが,そこに厳しい時間制限が適用されると,医師・看護師がまったく回せなくなり,他の施設からの応援も(休養時間が取れないので)お断りされる事態となるからです。多くの医療施設で法令違反にならない唯一の方策は「時間外に診療をしない」ことにならざるを得ない状況に追い込まれると思います。

 我が法人も法令遵守のために引き続き最大限の努力をいたしますが,医療の現場は非常に厳しいことを皆様にご承知おきいただきたいと思います。

 二つ目の「感染症」について。

 COVID-19感染症は感染症法上の5類に格下げされましたが,いまだ決定的な予防法と治療法は存在しないため,医療機関ではクラスターがほぼ毎月のように発生しています。そのたびに病院収入は数千万円落ち込むため,年間では億単位の欠損となっています.全国的にみても同様の傾向と思われ,この感染症が病院運営に対し大きな負の要因であることはなんら変わりありません。

 三つ目の「物価高/賃上げ」ですが,建設費,修繕費などは軒並み2倍程度になり,消耗品,エネルギー関連費用,果ては廃棄物処理費用に至るまで,幅広い分野で大規模な値上げが実施されてきました.上述のように病院の収入減が続く中,支出が増える状況となっていますので,保険診療を行っている医療施設の多くが悲鳴を挙げています。

 「個々の努力で収入を伸ばし支出を減らすこと」がそもそもできる環境にはないのが病院の現状です。

 また,賃上げについてですが,看護師らの給料を上げてきてはいますが,医療職以外の景気の良い職種の賃金やアルバイト代の方が遥かに高額となる歪んだ状態となってきたため,この面からも看護師は魅力的な職業ではなくなっています。

 そのためだけではないかもしれませんが,昨年から看護師養成校の定員割れが顕著となり,道と札幌でも例外ではありません。これはつまり,2〜3年後の新卒者が減ることを意味しますので,医療現場は間違いなく窮地に陥ります。

 病院があって医師がいたとしても,看護師不足によって診療が制限されるという由々しき事態が身近に迫ってきていることを私は深く憂慮します。

 以上のように病院は,人員不足+収入減+支出増の三重苦に見舞われています.病院個々の努力だけでは立ち行かなくなってきたこと,つまり社会インフラである医療が真に危機を迎えていることを,一般の方にはもちろん行政関係にもしっかりと認識していただくよう,私は働きかけ続ける所存です。

 職員各位に於かれましても,正しい認識と危機感をもち職務に励まれることを強く希望します。

 令和7年元旦

社会福祉法人 北海道社会事業協会

理事長 吉田 秀明

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