北海道北後志圏の地域医療に従事・貢献する北海道社会事業協会 余市病院

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院長より新年のご挨拶

新年は「地域医療の正念場」

(福)北海道社会事業協会
余市病院 院長 吉田秀明

新たな年を迎え,謹んで挨拶を申し上げます.

元日は死傷者・行方不明者多数を数える大災害に見舞われ,いまもなお懸命な捜索・救助活動が続けられている状況,翌2日は旅客機側には犠牲者が出なかったものの,我が国を守る重要な担い手が5名失われる大事故が発生し,とても正月を祝う気持ちにはなれません.被災地におかれましては,せめて一日も早く日常を回復できるようにと願うばかりです.

また,世界的には,ウクライナに加え中東のガザでも戦争が起こり,どちらも一向に収束する気配がなく,犠牲者が増え続けています.私を含めほとんどの一般庶民は,人を殺し合うことのない平和な世界になることを強く願っていると信じますが,それが叶いそうもないことは悲しく残念です.

戦争・軍事侵攻は自然相手ではなく,地球上最高の知能を持った人間が作り出している事ですから.

 

さて,今年2024年は,いくつかの要因で地域医療にはとても厳しい年となることが予想されます.我が余市病院も生き残りをかけ総力を注入して乗り切らなくてはならない,まさに「正念場」の年になりますので,その点を少しお話いたします.

 

まず一番目は「働き方改革」の本格的発動です.

このきっかけはおそらく本州方面の病院に勤務する研修医が数年前に「過労死」したことと考えられます.そこで若手(=上司の命令に抗えない)医師の労働環境を改善する必要がある,との根拠から,またたく間に(ろくに現場の実態を調べもせず,意見も聞かず,都会も地方も全国一律に)法整備が進んだものです.その結果,この4月から時間外労働が厳しく制限されるようになります.時間外における宿直・日直業務が労働に当たるか否かの精査,24時間のうち連続した9時間の休養を設ける義務,などが課せられます.

ここで何が問題かというと,地方の病院は30年以上前から医師・看護師不足で,とくに時間外の救急対応はどの病院もギリギリの状態(半ばボランティア)で大学病院からの応援を受けたりしながら頑張ってきました.そこに厳しい時間制限が適用されると,医師・看護師がまったく回せなくなり,大学からの応援も(休養時間が取れないので)お断りされる事態となりうるからです.

法令違反とされた場合,時間外の診療は一切できなくなる可能性があります.私達地方の医療従事者は,地域住民のため,患者さんのために診療にあたることは時間内・外を問わず当然のことと認識していますが,それが「法令違反」となり,監督行政機関の指導・改善命令の対象になってしまう懸念がとても強いというのが現場の偽らざる感覚です.

法令の基準に収める唯一の方策は「時間外に診療しない」ことにならざるを得ないのではと,大いに心配しています.

このような事態にならぬよう,当院は最大限の努力をいたしますが,現実は厳しいことを地域の皆様にご理解いただきたいと思います.

 

二つ目は「ダブルUP」です.

これは物価高と賃上げのことです.

昨年から幅広い分野でかつてないほどの,半分くらいは開き直りと便乗に見えるのですが,大規模な値上げが実施されてきました.当然,病院で必要とする様々な用品費および光熱費などが軒並み上昇しました.

一方,賃上げについて,昨年秋頃から業績の良い,体力のある大企業などを中心に人員獲得も兼ねて,この春には大幅な賃上げの機運が醸成されております.医療界でもとくに看護師をはじめとするコメディカルの報酬アップは,かなり以前から必要と考えていましたが,困難な状況でした.

なぜかというと,保険診療を行っている病院の収入(診療報酬)は中央で統制されており価格転嫁できないからです.

繰り返しますが上述のように「企業努力で収入を伸ばし支出を減らすこと」がそもそもできる環境にはないのが病院の現状です.加えて,行政主導で進められた医療DX(電子認証,電子カルテ,各種請求のオンライン化,画像データのデジタル保存,など)の維持・更新に5〜7年ごとに数億円の費用が発生します.

また,病院特有のゴミに感染性廃棄物があります.一例として手術に使う器械をみてみますと,購入費,使用後の廃棄専用の容器購入,そして廃棄業者に処理料を支払いますが,これで3度の消費税がかかります.余市病院のような中規模病院でも,感染性廃棄物の処理には年間1,500万円(税込み)程度かかっています.

 

3つ目はやはり感染症です.

重症化率が著減したとはいえ,SARS-COVⅡに対しては,いまだ決定的な予防法と治療法は存在しません.5類になっても医療機関における防御態勢は従前と同じであり,感染による職員の欠勤や病棟閉鎖など,病院運営には大きな負の要因であることになんら変わりありません.

 

以上,3つの要因で,「働き方改革」と「感染症」は人員不足と収入源に直結し,「ダブルアップ」は,そもそも価格転嫁不能な医療機関に理不尽な支出増を強いるものです.

 

対処策としては,第一に診療報酬体系,とくに入院基本料について.

20年以上前から,医療の効率化,質の向上のために「医療資源を都会の大規模病院に集約する」という厚労省の誘導施策により,ザックリいうと医師・看護師が多い病院は診療報酬が高く,少ない病院はそれが低くなるよう設定されています.ですので,人員不足に喘ぐ地方の病院は,おおむね低い診療報酬となっています.同じ診療をしても人員数により報酬に格差が生じることは不公平だと思っています.「同一労働同一賃金」は医療には適用されないのでしょうか.少ない人員での頑張りは評価に値しないのでしょうか.

「同一診療,同一報酬」に是正すべきです.

次に,先に述べた消費税,物によっては2重3重にかかっているのですが,公的な医療を行う病院については,消費税を免除していただきたいと思います.病院は診療に必須の部品・機器を購入するのであり,一般の「消費活動」とは意味合いが全く異なります.

あと細かいかもしれませんが,感染性廃棄物処理は行政に担っていただければと思っています.自由競争に任せるような事業ではないからです.

 

この2つの施策(不公平な診療報酬体系の是正,消費税免除)により,地方の病院運営がかなり改善され,職員への報酬もアップさせることができます.職員報酬のアップは他の職種への対抗として是非必要ですし,社会的には消費行動の活発化に繋がるものと考えられます.

 

ここでポジティブなお話を一つ.

昨年9月に新しい外来棟「救急・感染症制御後志センター」が運用開始となりました.一番の特徴は,救急車がスッポリ収まるドックを有することで,シャッターを閉じれば被搬送者は雨雪風そして衆目に晒されることなく,安全に棟内に収容されることです.これは私が25年前に余市病院に着任して以来の夢でしたので,個人的にはとても満足しています.

 

最後はいつも同じお願いになります.

余市病院は北後志5ヶ町村・住民皆様のご理解と御支援の元に運営されています.私がお願いしたいことは「人口が減少しない地域作り」をさらに推し進めていただきたいということです.

地方はどこもそうですが,病院の努力だけでは人財を揃えることが極めて困難です.そこで医療人に移住を含めた興味をもたれる(総合的魅力と小中校の学力アップ)地域として広く認識されることが必要だからです.

病院も積極的に協力させていただきますので,住民の皆様方にもさらなるご指導・御鞭撻を賜りますようお願いいたします.

 

令和6年 元旦

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